令和5年4月  


         同人作品(石井いさお 抽)    

     訪へば友は畑の野焼守 山本  宏
     大火鉢奥に奥にの老舗宿 山岡 妙子
     頬熱し野焼の果てし径を来て 谷添 睦子
     冷まじや強燭光の手術室 楽満 永子
     啄木の寝しやも草の駒返る 今井 文雄
     麦踏や高嶺颪を一身に 西岡佐和子
     竹馬を支ふ両手の斜の角度 田畑 寛一
     ははの手の書き損じたる年賀状 冨田 まり
     連凧の糸一本に操らる 舘 千恵子
     餅切りの出刃に右への曲がり癖 百上 進一
     元日も鶏舎給餌の機械音  西山サチ子
     鶯のまだ荒彫に余白の音 水野 悦子
     抱き寄する競らるる子牛草青む 西脇 朋子
     百合鷗風の手摺に横並び  浦  悦子
     どんど組む芯の立処を先づ均し 城  明子
     手返しも力の一つ餅を搗く いりやま勝英
     駅立ちの一語一語の息白し 福田  正
     我が胸の素粒子震ふ余寒かな 椿本 格三
     隙間風見えぬすきまの現れる 宇佐美ちゑ子   
     閻王に供へてありぬ小豆粥   中山 暁代 
     鍬の柄を握るかたちに悴む手 塗矢智惠子 
     卒業す職員室へ礼をして 高橋  進
     玉鋼折り畳み打つ鍛冶始 三原 勝雄
     千枚田氷の(しな)となりにけり  坂野  辰
     御神渡り湖に山脈結氷期 加藤 佳代
     豆打や声刺さるまま鬼逃ぐる  梅枝あゆみ
     かくし場を各々持てり若布刈舟 廣  波青
     生きてゐてこの冷たさよ寒卵 榊原 惇子

                       


         会友作品(石井いさお 選)

     影射して寒釣の座をずらしたり 山本  弘
     五十鈴川手水に寒さ残りをり 松見たき子
     霜柱もろとも根深掘り起こす 中村たけみ


           

        誌友作品(石井いさお 選)

     全身の重き静寂弓始 髙木 満枝
     厨窓入り日のずれて日脚伸ぶ 小野 秀子
     素粒子を(めぐ)(めぐ)らせ去年今年 杉山ひろし