令和5年3月
  
     同人作品(石井いさお 抽)    
     菊日和仏巡りて手を合はす 沼倉 輝代
     恐竜の踏みしか我も踏む銀杏 天野 理江
     機器すべて電源入れる初仕事 寺本 勅男
     身を捨てて屋根裏潜る煤払 久松 雅彦
     手箒で軽く一掃き春の雪 島田 雅行
     太筆の「戦」の一文字師走空 小林ふみ子
     冬列島ドーハの歓喜酔ひにけり
市橋 晶子
     放水の水のカーテン出初式 水野さとし
     日の海に沖のタンカー初景色 西脇 朋子
     因はれの筏に育つ志摩の牡蠣 浦   悦子
     鯖街道熊川宿の初時雨  森川登志子
     小型車に合はせ小型の注連飾る 馬場 富子
     撫で肩の日光月光冬ぬくし 赤塚 靖子
     吹き荒ぶ岬の原野に寒立馬  城   明子
     一湾をめらめら燃やす寒朝日 野崎 孝子
     弛びつつ雁字搦めに蔦枯るる 寺本美和子
     オホーツクの海の咆哮冬鷗 佐野 弓子
     鴨の陣乱れし漁船過ぐる時 伊藤 和子
     木には木の姿ありけり枯木立 伊藤はじめ   
     冬銀河今出航の遠汽笛   鈴木 智子 
     北颪鋸歯状の尾根目立てせり 小林 保雄 
     徒雲に立ちてすぐ消ゆ冬の虹 宇佐美ちゑ子
     埋火を掻きて持て成す峠茶屋 奥野 順子
     細き筆細くつかひて筆始  加藤 正子
     駄菓子屋に色鮮やかな武者絵凧 髙橋  進
     クレーンに上ぐ潮のしたたる牡蠣の籠  石井 洋子
     白朮火を導線のごと持ち帰る 松本 愛子
     命綱結び城郭煤払ふ 内田 幸子

                       

 
  会友作品(石井いさお 選)

     過疎の町津波避難の塔寒し 山下  博
     雨戸繰る一枚づつの初明り 河合伊都子
     人影の見えぬ村社に初詣 安藤 仁星


 
   誌友作品(石井いさお 選)

     紙漉きの手を温めて求人紙 杉山ひろし
     初場所の力士肌張り音高し 仲野きく江
     寺忙し袈裟を作務衣に煤払 吉留 和子