令和４年９月　　

万緑やロボット働くレストラン	山岡　妙子
河鹿笛水音絶えぬ大原女径	豊田　征子
紅殻の軒に扇骨南吹く	岡部　邦枝
ペンキ職人汗と塗料の顔拭ふ	奥　やゑを
老鶯を聴く結界の浄土門	楽満　永子
炎天や真四角に掘る墓の基礎	今井　文雄
やませ吹く佐渡に黒黒能登瓦	足立　陽子
全身をバネに水切る夏の海	西岡佐和子
風鈴の短冊替へて今年の音	石塚　恵子
前肢追ふ後肢一寸尺取虫	鵜嵜　弘文
蛍狩闇も一緒に掬ひけり	辻野　和彦
うたた寝や陶風鈴の白き音	高崎しげる
人気なき標本室の五月闇	増田　　實
キャンプ張るこの星空の真ん中に	逵　　早苗
夕立を車窓に一駅並走す	服部さだ江
大茅の輪杖の歩幅に潜りけり	川村かほる
天空をマーブルに染め梅雨の月	野﨑　孝子
中折れ帽胸に黙祷コザの夏	伊室美枝子
泰山木花に奉書の品位かな	和波　伸子
日本海視界はみ出す大夕焼	田坂　成子
講座継ぐ夏至のひかりを栞とし	三輪　明美
御在所岳の大光背や梅雨夕焼	小林　保雄
あめんぼう流るる雲に飛び乗れり	塗矢智惠子
山の辺の古墳へ柿の花踏みて	中川キヌヨ
独り居の一人に足れる団扇風	小久江好子
田水張る追はるる如く水動く	宮下　元恵
夜光虫遠流の島の波間に	三輪　洋子
義経の蹴破りの塔夏天美し	川上なみ子

香具山に神への古道木下闇	安屋　宣子
離農せり入梅とのみ日記付く	山田　光司
梅雨湿り壁紙の剥がれ拡がれり	清水　義博

　
　　　誌友作品（石井いさお　選）

花ござの藍は青へとぼかし織	長谷川晃子
海の底知る海鞘を割く刃先かな	𠮷田　勝博
紺の夜のヴィードロの音や軒風鈴	井戸　康子