令和6年5月
  
   同人作品(石井いさお 抽)    

     桧皮葺く釘吐きつづけ遅日なる
乃美 隆子
     岬端にけぶる大海雨水かな 赤松由美子
     龍馬ここに語りし座敷隙間風 川上 純一
     羚羊の崖の高さを知らざりき 山川   斎
     波を追ふ防災船や海のどか 高橋はるみ
     薄氷はローケツ染の罅模様 西山サチ子
     雪折れの木を跨ぎつつ郵便夫 玉置 泰生
     風も亦過客でありし蝶の昼 北林 重代
     山襞は荒彫版画残る雪 赤塚 靖子
     針の孔年毎細し針供養 伊藤 泰子
     春疾風踏ん張る杖の重さかな 野崎 孝子
     放埓の風をジグザグ揚雲雀 寺本美和子
     合流しいよよ昂る雪解川 坂下 充子
      小さくなりし虫除けを替へ雛納ふ 北村みよ子
     せめぎ合ふ炎の気流大野焼 三輪 明美
     蹲の淵より水漬く薄氷 奥田 照子
     形なきものに躓き春寒し 渡邊  健
     料峭や猿ぼぼ揺るる庚申堂 奥野 順子
     春泥の轍飛び越ゆモトクロス 磯谷 晋作
     水温む指の変形進む手に 石田 立子
     手袋を脱ぎ本当の力出す
加藤 正子
     芽吹く木をコゲラが突つく音寒し 香山 英子
     大正生れ裏浮世絵の春コート 谷  けい
     雛巡り見知らぬ人と雛を誉む 山本 孝子
     壬生狂言水無き水で笊洗ふ
伊藤 孝子
     歩き遍路分水嶺を越え来たる 川上なみ子
     磯開村人静かなる殺気 山口 八重
     寒明や仁王の力こぶに皺 大野 利江

                      
 
   会友作品(石井いさお 選)

     比良八荒白帆四十五度傾斜
杉山ひろし
     総檜古民家カフェの木の芽和 中村 乞多
     あをみちて水の世界や犬ふぐり
青木喜美子


 
   誌友作品(梅枝あゆみ 選)

     ボンネットに肉球の跡よなぼこり 山田 律子
     児の顔に黄の反射するミモザかな 大内ちさ子
     干し若布風の軽さに乾びゆく 伊藤百合子