令和5年7月
  
   同人作品(石井いさお 抽)    

     著莪の花七曲りして正寿院 足立 陽子
     手水舎の紙垂揺れゐたり青葉かな 丹賀  祥
     春昼の泥に塗れしクローザー 沖  節代
     一塊の炎と化して山車廻す 水野さとし
     蛇苺少女よそほふ悪女かな 高崎しげる
     海老反りの斬られ役へも花吹雪 百上 進一
     春愁や一揆の寺の焦げ灯籠
谷口由紀子
     グラス持つセーヌ河畔の若葉風 堀越  毅
     三船祭扇流しの花一図 北林 重代
     満開とふ大役果たし花は葉に 浦  悦子
     桃山の装束今に御田祭(おみた)かな  西尾 泰一
     藤の香や静かに人の立ち代はる 福井 尚二
     虎杖折る空気とび出す音まろし 樋口 良子
     矢車の音を断ち切る風の束  寺本美和子
     見開きのページが雷に立ち上がる いりやま勝英
     代田中水禍のやうな一軒家 伊藤 久子
     薪能火を足す程に真の闇 三輪 明美
     押し戻す泥を宥めて畦を塗る 福田  正
     花の山車車切(しゃぎり)呼吸(いき)を美学とす 水谷 岩夫   
     牡丹園蔭も斑濃(むらご)に風通る   宇佐美ちゑ子 
     木下闇佐渡の世阿弥の流刑道 山田 光司
     知床の山を背にして海胆すくふ 加藤 佳代 
     椿落ち身幅がほどの切通 川上なみ子
     戦火なほ地上に失せず青峰忌  松本 愛子
     武具飾る矢傷の残る馬印 佐藤三千子
     潜り戸の鈴音こぼれ郁子の花  津野美都江
     藤棚へ誘ひし蝶花と化す 榊原 惇子
     葉桜となりても憩ふ園であり 内田 幸子

                       

 
    会友作品(石井いさお 選)

     深海は海女の生業磯竈 山路 文隆
     春の昼鯉釣る餌の固くなり 山本  弘
     水を得て春田のかほとなりにけり 青木喜美子


 
   誌友作品(石井いさお 選)

     オットセイ洗ふホースの薄暑哉 凧   巽
     十軒の海苔干す路地が通学路 坂下 雄子
     花林檎そよげば別れがたきかな 倉矢  幸