令和6年7月

「蟻地獄」
 
  小さき蝌蚪まだスピード出ぬ泳ぎ

  ヨットの帆外され風の行き場なし

  霾や気流を黄色に染め上げて

  土色の水皺波打つ水張田

  口を開く燕の子らのよき角度

  間隔の正しくの壺揚がる

  蜜蜂の眼まで花粉にまみれをり

  雷鳥や万年前の岩踏まへ

  雉鳴くや谺の声も尖りをり

  闇のみを知つてゐるなり蟻地獄