令和6年5月
「火の布」
 
  豆腐屋や絹の手ざわり春の水

  金色を延べて花菜の余白なき

  春寒し竹の百幹白骨化

  穀こぼる浜を出てゆく蜆舟

  雁帰る生き切るための羽を搏ち

  一といふ寂しき数字残る鴨

  牛蛙湖面に広ぐ周波数

  よき緩み持つ芯の凧高揚がる

  野火に芯ありて火中に炎立つ

  大野火や天に火の布広げたる