#5
その頃。 「はー疲れた。何だってオレがクラスの出し物の実行委員なんかやらなきゃいけねぇんだよ…。ったく、…………」 カバンを肩にかけなおす。 「ワルやってた…自業自得かぁ…」 三井はしきりにかぶりを振りながら体育館へと歩を進めていった。
実は三井、なかば強制的に「文化祭実行委員」たるものに選ばれたのである。
練習の段取りや、当日の仕切りなど、お遊びのはずの文化祭を台無しにする多忙さに、3年ともなると実行委員になりたがるものは少ない。 多少の見返りがあろうとも、だ。 しかし、彼は受けざる得なかった。 その応えは、担任の耳打ちにある。 「まあ、これくらいでもやって点数稼ぎしとかんと…」と語尾を濁らせたのだ。
ちっ 絶対嫌がらせだ!!!先生の権威を振りかざした横暴だ!!と思うのだが口には出せない。 「…もう、部活終わってるよな。 そういえば部活の出しもん何になったんだー?もう決まってんだよな。…ま、いーやオレは関係ねぇ。自主練でもしてくか。」 一番先輩はオレだしな。冬の選抜もオレの活躍により…。 そんな事を考えながら、三井は迫りくるキケンに備えることなく体育館の扉にてをかけた。
「集合!!」 綾子に代わって、春子が号令をかけた。 ウザギ跳び、腹筋、ランニングやフットワークなど、過酷なトレーニングを終えた5人は足を引きずり、汗だくになりながら綾子・春子の下へと集まってきた。 「はい、ご苦労様」 綾子はねぎらいの言葉とともに、笑顔を送る。 「…!!」 ゾクッとするものが身体を通り過ぎた。それは、本能的に察知した予感だったのかもしれない。 「今から、肉体美披露宴に向けてのポーズ練習やってもらうわよ!!当日もこのくらい汗かいてでてもらうからね!!」
ポーズの練習、と言われてももう男たちは何も言わなかった。 彼女に何を言おうと無意味だと―そうわかっているのだ。 「あんたたちはポーズの確認してね。」
ということで、綾子・春子・佐々岡・桑田は、この汗の光る猛者たちの姿勢の確認をする事になった。
「ルカワ…あんたは腕立てもしなきゃね。桜木花道もケガする前ぐらいまで持ってかなきゃ。」 今は、上半身裸の中腰で腕を曲げた体勢になり、桜木・流川・宮城は綾子ら4人の前でポーズを取る。
―そのとき。 ガラッ、という鈍い音と同時に体育館の扉が開く。 7人の視線が一斉にそこに注がれる。 「……」 三井の目には、汗だくで必死の形相を浮かべ、雑誌やTVにでてくるようなマッチョ・ポーズをとる3人の姿が鮮明に映し出されたに違いない。 「……ぁあ」 三井は一瞬視線を明後日の方向に逸らし、そして扉をしめた。 扉を閉めたときの鋭い音が、悲鳴のように体育館にこだました。
三井は、扉を閉めてから一呼吸、二呼吸する。 まさか、オレまであの中に入るわけねぇよな…そんな考えを頭から追い出すため。
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