第2章

―数日後。

「仙道さん、今日も遅刻でっしゃろかー?」

今日は田岡監督の来ない日だ。
しかも、主将仙道は影も形もない。部員たちもいささか緊張感に欠けるようだ。
もっとも、仙道の遅刻は日常茶飯事なのだが…。
ふぅ―、と彦一は呟くと

「皆さん、集合してください!!いつもどうりのメニュー始めましょうや。」

仕方なく2年の福田や越野、植草を押しのけて号令をかけた。
悪気はないのだが、プライドの高い2年生(とくに福田など…)の顰蹙をかったようだ。

「グヌゥ…生意気な野郎だ…」と、これは越野だ。

「ん、何か言いはりましたか?越野せーんぱい?」

フハハハハと(田岡監督に似てきたらしい)彦一がノートを手に笑った。
部員たちは彦一のチェックが田岡監督に関与しているのではないか!?と感づいているため、今や先輩たりともうかつに手を出せない状態になっている。
まさに、綾南は「弱肉強食」の、地獄絵巻そのものである。
媚びることも時には大切。

「ハ、ハ…何でもないよ、彦一…(様)…。」

越野は泣きそうだ。プライドの高い福田がキレるのも秒読みだろうと噂はたえない。

「そうでっか?じゃあ、練習始めましょか。」

彦一は虎視眈々と段取りを決めていく。
もしかしたら、田岡監督よりも厳しいかもしれない。

―練習が始まった。が、昨日とは打って変わって静かだ。
田岡の罵声がないからだろうか?…それだけではないようだ。
彦一のペンを動かす音が体育館にこだましている。
(一人やられたな…)(オ、オレなんかしたかな…)
目と目で語り合う哀れな部員たちの姿があった。
田岡監督と違い、直接指摘されない分不安は募る。
精神的ダメージはことのほか大きい。
2,3日は戦闘不能になること必至だ。
彼らは救世主が現るのをただひたすら待ち望むのだった。

もう彼らの余力も磨り減ってきた頃、「チューッス」という間の抜けた挨拶とともに、仙道が姿を見せた。
高くなった日差しが開かれたドアの隙間から覗いて、仙道の姿は影になってみえる。
「チューッス、仙道さん」
遅れること30分、仙道が姿を現した。
皆の眼には「救いの女神」そのものだったことに間違いない。
(お願いだ!!彦一も練習に入るようにいってくれ!!)
皆の期待はただひとつ、期待は膨らむが…「よぉ、彦一ご苦労。頑張れよ。」
そして、仙道はその他部員の練習に混ざっていく。
ああ、女神様は鈍い。
それよりも何よりも、主将である仙道がもっと仕切るべきである。

―今日も明日も、明後日も…茂一と彦一の恐怖統治は続く。
哀れな子羊(部員)たちに、幸せは訪れるのか!?
そして、田岡監督が彦一に実権を取られるのも時間の問題か!?


終り

一言:彦一くんって、憎めませんよね。
私は本当は選手として頑張って欲しいですし、選手としての活躍を願っています。
(でも彼選手なの?ねえ??)
しかし、彼が今後どのような成長をするのかは全くナゾ。ナゾ…
あ、おもしろそう。そうして書いたのがこの話です。
ふざけ過ぎ、といわれれば反省せざるおえない話ですが、少しハメを外して読んでいただけたら…と思っています。

この話を読んで不快に思ったひと、ごめんなさい。
少しでも、SLAMDUNKのキャラを身近に感じてもらえたなら(王道とは言い難いですが)嬉しいです。
綾南について、また話を書く機会があれば書いてみたいです。

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