穴 〜2011卯年ver.〜
うさぎは穴の底にいた。天を仰ぎ助けを呼ぶように鳴いていた。地上では風が吹き荒れている。うさぎの声はどこにも届かず穴に吸い込まれた。
よく冷える夜だった。雪が降り始めた。うさぎは鳴くのをやめて俯いてしまった。
しばらく地面を見つめていたが、決心したように顔を上げると、後ろ足で穴底をつよく蹴った。素晴らしい勢いで穴を駆けあがる。穴から出たうさぎはその勢いのまま駆けて行った。
地上には雪が積もった。
穴には雪が積もらない。うさぎの去った小さな穴はぽっかりと口を開け雪を吸い込みつづけた。