令和5年9月
「角度」
 
  山霧が雨となりゆく水芭蕉

  夕霧の逆落としくる黄菅かな

  朝凪や弓なりにひく地曳網

  時の日や蟹は満ち干を時計にし

  水が攻め水が守りて稲育つ

  海神が潜る二見の大茅の輪

  風ほしいまま甲板のハンモック

  友釣りや鮎の縄張岩一つ

  糸とんぼ小さき縄張争へり

  無駄のなき角度や鰻返し焼く