令和5年3月
「鯨」
ゆりかもめ波の高さに浮き沈み
ウィンチの音重く揚ぐ大鮪
片脚に命を託し凍つる鶴
白く来て白く去りゆく寒念仏
七萬の文字彫る除夜の鐘を撞く
深海に耐ふ鮟鱇の大き
肝
(
きも
)
灯台や靴音寒き螺旋階
大寒や通りかねゐる畳針
糶り勝ちし箱見ず次の河豚の箱
鯨過ぎ潮流強く後を追ふ