この作品について
原作:シェイクスピアの戯曲『マクベス』
台本:フランチェスコ・マリア・ピアーヴェ、アンドレア・マッフェイ
初演:1847年3月14日 フィレンツェ・ペルゴラ劇場
ヴェルディはシェイクスピアの戯曲のオペラ化をいくつか構想した。実現したのはこの『マクベス』のほかに、『オテロ』と『ファルスタッフ』の3作。『リア王』も常にオペラ化候補だった。
ストーリーは原作通りで、その陰鬱な雰囲気を見事なオーケストレーションで描き出している。冒頭の魔女たちの場面の演出、第4幕のマクベス夫人による「夢遊病の場」も見どころのひとつになっている。
登場人物
- マクベス/バリトン
出世したいという願望は人並みにあるが、夫人ほどに野心があるわけでもない。しかし夫人の言うことに従って、王や自分に敵対する者を殺したりするが、少しのことで動揺したり、安心したり、付和雷同なところがある。 - マクベス夫人/ソプラノ
夫の地位を高くしようという野心に燃える女性。しかしそのやり方は甚だ黒く、最後には発狂し、狂い死にしてしまう。作曲家は、「この役は美しい声のソプラノではなく、醜くしわがれた声で歌われるべき」としたが、逆にそっちの方が難しい。 - マクダフ/テノール
スコットランドの貴族。
あらすじ
第一幕
マクベスとバンクォーが森を通りかかると、魔女たちが予言をする。マクベスはコーダーの領主からスコットランドの王へ、バンクォーはその子孫が王位に就くだろう、と。
第二幕
野心に燃えるマクベスは、夫人のそそのかしに乗って、やって来たダンカン王を暗殺する。マクダフとバンクォーが死んだ王を発見する。さらにマクベス夫妻はバンクォーの暗殺を企む。マクベス夫人はアリア「光は衰えて」で、邪魔者はすべて殺す、と歌う。
第三幕
刺客たちがバンクォー親子を襲う。しかし、バンクォーは不吉な予感を天から影が落ちてと歌い、息子を逃がす。祝宴の席で、バンクォーは殺したが、息子は取り逃がしたと報告を受けて、マクベスは錯乱する。マクベスは再び魔女たちの予言を聞きに行く。そして、マクダフに気をつけること、バーナムの森が動かぬうちは大丈夫、そして女から産まれ落ちた者には負けぬ、と告げられる。
第四幕
マクダフは妻子を殺され、おお、息子たちよを歌って復讐を誓う。一方、マクベスの城では、夫人が夢遊病のように「消えてしまえ、この呪わしいしみよ」と毎夜歩き回る。夫人が死に、バーナムの森が動く。マクベスは襲ってきたマクダフと戦うが、「帝王切開によって」産まれたマクダフに倒される。