トロヴァトーレ / Il Trovatore

この作品について

原作:アントーニオ・ガルシア・グティエレス 『吟遊詩人』
台本:サルヴァトーレ・カンマラーノ
初演:1853年1月19日 ローマ・アポッロ劇場

 旋律美とダイナミズムに満ちた、血わき肉おどる勇壮で流麗な旋律が続く典型的なイタリア・オペラ。ストーリーは複雑で、美女を救う騎士の恋、美女をめぐる兄弟の葛藤、母娘二代にわたる復讐など、ドラマティックな要素が満載されている。
 『リゴレット』『椿姫』と並んで、ヴェルディ中期を代表する傑作。特にソプラノからバリトンまで、主役級の声を必要とし、イタリア・オペラの中で最も声楽的に充実した作品と呼ばれている。それぞれの声域に、必ず見せ場となるアリアが用意されているからである。だが、台本の複雑さゆえ、あまり良いストーリーではないとの批評も。また、2幕最初にジプシーたちが歌う合唱は特に「アンヴィル・コーラス(Anvil Chorus)」と呼ばれ、様々な合唱団のレパートリーともなっている。
 メゾの視点から見れば、ドラマ的にはこれはアズチェーナが主役のオペラです(笑)

登場人物

あらすじ

第一幕
 ルーナ伯爵の従卒フェルランドが兵隊たちの眠気覚ましに、と古い出来事を語る。それは――あるジプシーの老婆が、先代伯爵のふたりの息子のうち、弟君を呪い殺そうとした罪で、伯爵に火あぶりにされたが、弟君は行方知れずになってしまった。その後、火あぶりの焼け跡からに焼けた赤ん坊の骨が発見された――という話。先代の伯爵は悲しみの内に死んでいったが、その残された兄君・ルーナ伯爵は、その弟が生きていると信じている、とも。兵隊一同は、そのジプシーは魔女だったのだ、と言い、真夜中を告げる鐘の音に恐怖を覚えつつも持ち場に戻って行く。
 場面が変わって、女王の付き人であるレオノーラはアリア:おだやかな夜:Tacea la notte placidaで、馬上試合で冠を渡した騎士──後に自分の下へ吟遊詩人(トロヴァトーレ)として現われた人を愛するようになったと歌う。レオノーラの侍女はその恋は不幸な予感がする、とレオノーラに告げるが、レオノーラは愛の炎を胸に、吟遊詩人を待ちわびる。折りしもレオノーラを愛する伯爵が、彼女の部屋の窓の下で待っていると、どこからともなく吟遊詩人の歌声が聞こえる。その歌声を聞いて部屋から出て来たレオノーラは、伯爵をマンリーコと勘違いし、愛を打ち明ける。直後にマンリーコが現われ、誤解は解けるが、伯爵は怒り、マンリーコと決闘をする。

第二幕
 ジプシーの老婆・アズチェーナが、炎は燃えて:Stride la vampaで、昔あるジプシーの老女が火あぶりにされ、伯爵の子供を焼き殺したはずが自分の子供を火に入れてしまった、と歌う。それを聞いた息子マンリーコは自分の出生を疑う。しかし、レオノーラが修道院へ入ると聞き、彼女のもとへ急ぐ。伯爵もレオノーラを待ちながら、アリア:君が微笑み:Il balen del suo sorrisoを歌う。が、マンリーコはレオノーラが修道院に入る寸前に彼女を奪い、伯爵は復讐を誓う。ところが、アズチェーナが伯爵に捕まってしまう。彼女を尋問した伯爵は、マンリーコが彼女の息子であると知り、これは一石二鳥だとほくそ笑む。

第三幕
 マンリーコとレオノーラの挙式の日。だが、マンリーコは敵陣に出撃することになった。喜ばしい日なのになぜ、と悲しむレオノーラを勇気付けるが、そこへマンリーコの母が捕えられたという知らせが入る。マンリーコは意を決して見よ、恐ろしい炎を:Di quella piraを歌い、捕われている母親を助け出すため、敵陣へ乗り込む。

第四幕
 マンリーコは捕えられる。レオノーラは捕えられたマンリーコを想い、恋はばら色の翼に乗って:D'amor sull'ali roseeを歌い、伯爵のもとへ。自分はあなたのものになります、と言ってマンリーコの助命を願うが、その時彼女はこっそりと毒を飲む。捕われのアズチェーナとマンリーコのもとへレオノーラが現われるが、彼女は毒がまわり、「他人のものとして生きるより、あなたのものとして死にたい」と最後までマンリーコへの愛を貫き、死ぬ。そこへ伯爵が登場、レオノーラの裏切りに怒って、マンリーコを処刑する。アズチェーナは止めようとするが、マンリーコが処刑されたのを見るやいなや、「マンリーコはお前の弟だったのだ!お母さん、復讐を果たしました!」と言って息絶える。(息絶えない演出の場合もある。)あとには伯爵がひとり残される。