トスカ / Tosca

この作品について

原作:ヴィクトリアン・サルドゥー 『ラ・トスカ』
台本:ルイージ・イッリカ、ジュゼッペ・ジャコーザ
初演:1900年1月14日 ローマ・コスタンツィ劇場

 プッチーニの書いたヴェリズモ・オペラ。劇的な表現に富み、多くの美しいアリアが登場する。それなのに主な登場人物は全員死んでしまうという、なんとも暗いオペラ。しかし、管弦楽が出す最初の一音でこのオペラの世界に引き込まれてしまうから、プッチーニはやはり偉大だ。
 このオペラの最後、ヒロインが身を投げるところで、彼女は「おお、スカルピア、神の御前で!」と叫ぶ。この言葉について、様々な疑問が出ている。なぜ恋人の名を呼ばないのか…などなど。私の意見としては、「神の御前で」とは「神の御前で正しい裁きを受ける」との意味ではないかと思う。彼女も、正当防衛とは言えスカルピアを刺殺している。信仰深い彼女には、もちろん罪の意識が重くのしかかっていただろうと思う。「神の御前で!(Avanti a Dio!)」という短い言葉の中には、「全てを正しく裁かれる神の御前で、どちらが正しいか、裁きを受けましょう!」という意味が込められているのではないだろうか。決して、「実は恋人カヴァラドッシよりも、スカルピアの方に惹かれていた」とかいう、くだらん解釈ではないのです。
 ちなみに、私が初めてオペラの全曲版で買ったCDがマリア・カラスとジュゼッペ・ディ・ステファノが歌うこの作品でした。一時期はそのCDばっかり聞いていました(おかげでほぼ全幕覚えています)。コメントが多いのはそのせいです(笑)

登場人物

あらすじ

第一幕
 オーストリア支配下にある1800年のローマ。聖アンドレア・デッラ・ヴァッレ教会(:このS.Andrea d.Valleはローマに実在します!後に出てくる聖アンジェロ城:Castel S.Angeloや、ファルネーゼ宮殿:P.za Farneseも実在します。イタリア・ローマに行く機会があったら一度訪れてみては?ただ、アッタヴァンティ家の礼拝堂だけは実在しないそうです。)に脱獄した政治犯アンジェロッティが逃げ込んできて、妹のアッタヴァンティ侯爵夫人が隠しておいたアッタヴァンティ家の礼拝堂の鍵と女物の衣装を探し出し、礼拝堂に隠れる。間一髪、堂守が画家カヴァラドッシに洗うよう頼まれた絵筆を持って入ってくる。が、カヴァラドッシはいない。するとお祈りの時を告げる鐘がなり、堂守が祈っているとカヴァラドッシが現れる。カヴァラドッシが描きかけていたマグダラのマリアの絵を描こうとキャンバスから覆いをどけると、堂守が「これは教会で祈っていた御婦人の姿!」と驚く。画家の不信心さにあきれる堂守をよそに、カヴァラドッシは妙なる調和:Recondita armoniaで恋人・トスカとマグダラのマリアのモデルである美しい婦人を比べ、「さまざまな美しさは芸術の神秘の中に溶け合っている…」と歌う。堂守はあきれながら立ち去る。すると誰もいなくなったと思ったアンジェロッティが礼拝堂から出てくる。それをカヴァラドッシに見つかるが、相手が古くからの親友と分かり、アンジェロッティが脱獄の事情を話していると、トスカが外からやってくる。嫉妬深く、口の軽い彼女にしられてはまずい、とカヴァラドッシは食事の入ったバスケットをアンジェロッティに持たせて礼拝堂に押し込む。外ではトスカが早く鍵を開けて、とイライラしている。カヴァラドッシが何食わぬ顔でトスカを迎えに行くと、トスカはすぐに鍵を開けにこなかったので女性がいたのでは、と邪推する。否定して優しい言葉でなだめるカヴァラドッシに気持ちが和んだトスカは、今夜、私の舞台が終わったら二人っきりで別荘に行きましょう、と誘い、今夜会う約束をして帰っていく。人がいなくなったのを見てアンジェロッティが出てくる。カヴァラドッシと2人で逃げる方法を考えていると突然聖アンジェロ城の大砲が打たれる。囚人の脱獄を知らせる合図だ。2人は慌てて逃げ、堂守が聖歌隊と「ナポレオン敗北」の祭りの準備をしているところに警視総監のスカルピアが入ってくる。スカルピアは絵を描いていたのがカヴァラドッシであること、バスケットが空になっていること、扇が礼拝堂に落ちていたことから、アンジェロッティとカヴァラドッシが2人して逃げたことを悟る。そこへトスカが現れ、スカルピアは嫉妬深いトスカを使ってカヴァラドッシの隠れ家を探そうと、「女物の扇がありました…。これが画家の道具ですかな?」とけしかける。それを見て逆上したトスカはカヴァラドッシの隠れ家へ、警官に後をつけられているとも知らず、直行する。スカルピアが教会の聖歌隊の歌に合わせてトスカへの邪恋の想いを歌う「行け、トスカ」で幕が降りる。

第二幕
 ファルネーゼ宮殿のスカルピアの部屋。優雅に夕食を取っているスカルピア。そこへカヴァラドッシが連行されてくる。トスカの歌声をバックに、スカルピアはアンジェロッティの居場所を白状させようとするがカヴァラドッシはなかなか口を割らない。そこへ舞台の出番を終えたトスカが登場。カヴァラドッシは「隠れ家で見たことを話してはならない」と言い残し、拷問部屋に連れて行かれる。最初は耐えるトスカだが、カヴァラドッシの叫びを聞いた瞬間、思わずアンジェロッティの隠れている場所を言ってしまう。拷問から解放されるカヴァラドッシ。トスカがアンジェロッティの居場所を告げたことで腹を立てるが、そこへ「ナポレオン敗北の知らせは誤りで、ナポレオンが大勝利を収めている」との知らせが舞い込んでくる。ヴォルテール主義のカヴァラドッシは興奮のあまり「勝利だ、勝利だ!」と叫び、スカルピアの逆鱗に触れたため、死刑者の牢屋に連れて行かれる。トスカはカヴァラドッシの命乞いをするが、そんなトスカにスカルピアは「助けてほしければわしの物になるのだ!」と迫る。トスカは歌に生き、愛に生き:Vissi d'arte,vissi d'amoreで「今まで善い事ばかりをしてきたのに、困難な今、主よ、なぜこのような報いをお与えになるのですか?」と歌う。すると隠れ家を見に行った警官が「アンジェロッティが自殺しました。あとはカヴァラドッシの死刑のみです」と告げる。トスカはスカルピアの物になることを承諾し、カヴァラドッシを空砲で打つという偽の死刑の約束をとりつけ、その後海外に出れるように通行許可書を書かせる。スカルピアが許可書を書いている途中、トスカはテーブルの上に置かれているナイフを見つける。スカルピアに見つからないようそれを後ろ手に隠す。書類を書き終え、スカルピアがトスカを抱きしめようとした瞬間、「これがトスカの接吻よ!」とナイフで刺される。スカルピアは息絶え、トスカはスカルピアが握っていた通行許可書を持って部屋から逃げ出す。

第三幕
 夜明け間近。羊飼いの少年のさわやかな歌が終わると音楽は一転、絶望的な旋律を奏でる。(このオペラ全体の中で最も美しい旋律でもある)後は死を待つばかりのカヴァラドッシ。せめて最後に、と愛するトスカに手紙を書く。テノールのアリアでも屈指の名曲、星は光りぬ:E lucevan le stelleでトスカへの想いを歌い上げる。そこへ通行許可書を持ったトスカが現れ、事の一部始終を話し、逃げる前にあなたは空砲で撃たれるのよ、だから撃たれたら上手く倒れて頂戴、と指示する。いよいよ死刑執行人が登場し、鉄砲でカヴァラドッシを撃つ。死刑執行人が皆去った後、トスカがカヴァラドッシを起こすと、彼はもはや息絶えていた。だまされた、と嘆くトスカの元に「スカルピアが殺された!」と騒ぐ警官たちが近づいてくる。全てが終わった事を悟ったトスカは「おお、スカルピア、神の御前で!」と叫び、塔の屋上から身を投げる。