この作品について
原作:アンリ・ミュルジェ 『ボヘミアンの生活の風景』
台本:L・イッリカ G・ジャコーザ
初演:1896年2月1日 トリノ王立歌劇場
『椿姫』や『カルメン』と並んで、世界でもっとも人気の高いオペラのひとつ。
若くて貧乏な芸術家4人と美しい娘2人(そのうち、ロドルフォとミミ、マルチェッロとムゼッタの2組のカップルが中心となる)によって、1830年頃のパリで繰り広げられる美しくも悲しいラブ・ストーリー。プッチーニ自身の体験も生かされているという第4幕の男4人のどんちゃん騒ぎは、プッチーニの天才さを如実に現わしている。この場面は是非DVDなどの映像付きで見てほしいところである。
登場人物
- ミミ/ソプラノ
お針娘。ミミとは呼び名で、本名はルチアという。そのことを明かす「私の名はミミ」と邦題がついているアリア、実は正しい訳ではなく、本当は「私はミミと呼ばれています」が正しい。(ちなみに、このアリアを私の通っている大学のイタリア語の教授は「人呼んでミミ」と素晴らしく訳してくれました。) - ロドルフォ/テノール
詩人。ミミを一途に愛する心優しい青年。アリアは「ケ・ジェリダ・マニーナ」と読むが、長いので「けじぇりだ」と略されるとかされないとか。 - ムゼッタ/ソプラノ
マルチェッロの元恋人。パトロンを作ったり男たちに気を持たせたりしているが、本当はマルチェッロのことが好きなちょっと不器用な憎めない女。つまりツンデレ。っていうか、普通のオペラだと、バリトンの恋人役にはメゾとかがいたり、ソプラノ役でもメゾが歌えたりするくらいの音域だったりするが、このオペラに関しては、2人とも完璧にソプラノ。どう考えても、プッチーニの陰謀t(略 - マルチェッロ/バリトン
画家。ムゼッタとついたり離れたりの関係。でも実はムゼッタを心から愛している。 - ショナール/バリトン
音楽家。この人が登場すると騒がしくなる。まぁ確かに、音楽家ってそんなもん(え - コッリーネ/バス
哲学者。長年着て愛着のあるコートに別れの歌を歌うなど、なかなかマイペースでいいキャラ。天然担当。
あらすじ
第一幕
クリスマス・イヴの夜、屋根裏部屋で画家マルチェッロと詩人ロドルフォが寒さに震えている。そこに哲学者コッリーネと音楽家ショナールが帰ってくる。3人は街に繰り出すが、ロドルフォは部屋に残って原稿を書く。そこに階下に住むお針娘のミミがろうそくの火を借りに入ってくる。彼女は鍵を床に落としてしまい、ロドルフォは鍵を探すのを手伝う。鍵を見つけたのはロドルフォだが、わざとまだ探しているふりをして彼女に近づくと、ミミの手に触れてしまう。そして、ロドルフォはアリア冷たい手:Che gelida maninaを、ミミは自己紹介のアリア私の名はミミ:Sì, Mi chiamano Mimiを歌う。意気投合したふたりは二重唱を歌い、彼らも夜の街に繰り出す。
第二幕
カフェに全員が集まったところに、マルチェッロのかつての恋人ムゼッタがパトロンとともに現われる。ムゼッタはマルチェッロの気を引こうと、アリア私が街を歩くと:Quando me'n voを歌う。結局、ムゼッタはパトロンを離れ、マルチェッロとよりを戻す。
第三幕
2ヵ月後、マルチェッロとムゼッタは居酒屋で働いている。そこにミミが来て、マルチェッロにロドルフォとの関係がうまくいっていないことを告白する。そこへロドルフォが現われたので、ミミは物陰に隠れ、彼が「ミミは肺病を患っているので、貧乏な僕からは離れた方がいいんだ。」とマルチェッロに言っているのを聞く。ロドルフォはミミがいるのに気づき、ふたりは愛を確認しながらも別れを決意する。ミミは最後にあなたの呼ぶ声に:Donde lieta uscì(告別のアリアと呼ばれる)を歌い、その横でマルチェッロとムゼッタは喧嘩を始める。
第四幕
それから時がたち、男4人はまた元の屋根裏部屋で暮らしている。ロドルフォとマルチェッロは昔の恋人が忘れられず、ふざけて気を紛らわせている。そこに瀕死のミミがムゼッタに連れられて運び込まれてくる。ムゼッタは自分のイヤリングを売って薬を買うため、マルチェッロと出て行く。コッリーネは自分の唯一の防寒具であり、長年連れ添った(?)外套をミミの薬代に売ろうと、外套との別れの歌を歌い、ロドルフォとミミを2人きりにしてあげようと気を遣うショナールと出て行く。しばらくの間、ロドルフォとミミはかつての愛を語り、やはりお互いに愛し合っているということを確認する。次々と皆が戻って来る。ミミは少し疲れた、と言って目を閉じる。すると、ムゼッタがミミに着けてあげたマフ(手を暖める防寒具)がミミの手から落ちる。それに気付いたマルチェッロはミミが息絶えた事を知る。皆が絶望の眼差しで自分を見つめる事に気付いたロドルフォは、やがてミミが事切れている事を知る。最後にはロドルフォがミミを呼ぶ悲しみの声が残り、幕。