この作品について
原作:ベルターティ台本&ガッツァーニガ作曲の歌劇『石の客』・モリエールの戯曲『ドン・ジュアン』
台本:ロレンツォ・ダ・ポンテ
初演:1787年10月29日 プラハ国立劇場(現・ストヴォフスケー劇場)
数々の女性を口説き落とし、最後に石像によって地獄に落とされる、スペインの好色な貴族ドン・ジョヴァンニ(ドン・ファン)の伝説に基づいている。イタリア人の台本作家ダ・ポンテによる三部作の2作目。喜劇とも悲劇ともつかない独自のオペラで、最後の地獄落ちのシーンの恐怖の音楽は18世紀のオペラとしてはまさに画期的なものだった。
しかし、実はこのオペラの中で、ジョヴァンニが女性を一度も落とせていない。エルヴィラにつきまとわれているからだとか、本当は色男じゃないとか、色々な論議がなされているとかいないとか。
余談だが、早口で「ドン・ジョヴァンニ」と言おうとして「ジョン・ドバンニ」と言ってしまう人が後を絶たないとか。
主役級の2人ともがバリトンという、なかなか面白い(?)キャスティングのオペラ。後はヴェルディの「シモン・ボッカネグラ」を彷彿とさせる…かも?
登場人物
- ドン・ジョヴァンニ/バリトン
次から次へと女を誘惑する好色な貴族。結婚の約束までして捨てたり、新婚の娘を結婚式のその日にたぶらかしたりと鼻持ちならない奴。最後には誤って殺してしまった騎士長の石像によって地獄へ落とされてしまう。(当然?)青年貴族なのだが、その女性遍歴の多さからか、はたまたバリトンという声質からか、歳がかなりいっているイメージを受けることが多々ある。 - レポレッロ/バリトン
ドン・ジョヴァンニの従者。主人の代わりに皆に捕まったり、主人に奥さんを取られそうになったりとちょっぴりかわいそうな人。「カタログの歌」が有名。 - ドンナ・アンナ/ソプラノ
騎士長の娘。ドン・ジョヴァンニに貞操を奪われそうになったあげく、父を殺される。悲劇。 - ドン・オッターヴィオ/テノール
ドンナ・アンナの婚約者。 - ドンナ・エルヴィラ/ソプラノ
ドン・ジョヴァンニに捨てられた貴婦人。 - ツェルリーナ/ソプラノ
村娘。マゼットと婚約している。舞台では婚礼の日。実はこの人のアリアのほうがドン・ジョヴァンニのオペラの中で一番有名かもしれない。オペラの中では1脇役に過ぎないが、怒り心頭のマゼットをうまくなだめたりする場面は見もの。 - マゼット/バリトン(又はバス)
ツェルリーナの婚約者。
あらすじ
青年貴族ドン・ジョヴァンニは、自他ともに認める女好き。今夜も従者のレポレッロをお供に、騎士長の娘ドンナ・アンナのもとへと忍び込むが、アンナに抵抗され、騒ぎを耳にして駆けつけた騎士長に決闘を挑まれて殺してしまう。アンナは婚約者のドン・オッターヴィオと復讐を誓う。
やっと屋敷を抜け出したドン・ジョヴァンニの元に1人の美女が現われる。彼女は「ああ、いったい誰が:Ah chi mi dice mai」と、恋人に捨てられた悲しみを歌う。それに目をつけたドン・ジョヴァンニは彼女を慰めよう(=口説こう)と近づくが、それがかつて自分が捨てた女性、ドンナ・エルヴィラだと知ると、家来のレポレロにその場を任せ、逃げてしまう。主人のこうした修羅場に慣れっこのレポレロは、「カタログの歌」を歌って、捨てられたのはあなただけじゃないと慰める。(いや、慰めになってねぇし(笑))
一方ドン・ジョヴァンニは、村の結婚式で花嫁のツェルリーナに目をつけ、館の舞踏会に誘って口説こうとするが、彼の正体を知っているドンナ・エルヴィーラに詰め寄られ(「ああ、立ち去れ、裏切り者よ:Ah fuggi il traditor」)、レポレッロとともに逃げ出す。ジョヴァンニにツェルリーナが口説かれていたのを見たマゼットはツェルリーナを怒るが、逆にツェルリーナにぶってよマゼット:Batti,batti,o bel Masettoとたしなめられてしまう。
懲りずに女漁りを重ねるドン・ジョヴァンニは、夜の墓地で以前殺した騎士長の石像に出会い、石像を夕食に招待する。招待に応じてドン・ジョヴァンニの館に現れた騎士長の石像は、このような生活を改めよ、と彼に迫るが、ドン・ジョヴァンニは頑として受け入れない。そしてついに、石像に地獄へと落とされる。