愛の妙薬 / L'Elisir d'Amore

この作品について

原作:スクリーブがオーベールの『妙薬』のために書いた台本に拠る
台本:フェリーチェ・ロマーニ
初演:1832年5月12日 ミラノ・カノッビアーナ劇場

 スペインのバスク地方を舞台とした喜歌劇(オペラ・ブッファ)の傑作で、コミカルな響きに加えて牧歌的な雰囲気とロマン派的な要素もたっぷり。南欧の香り豊かなオペラだ。
 登場人物はみな愛すべき人たちだ。アディーナの愛を感じたネモリーノの『人知れぬ涙』はテノールの屈指の名アリア。そのほかのアリアも優れ、楽しい二重唱も多い。初演も成功で、1ヶ月連続上演という大記録が残っている。『トリスタンとイゾルデ』の愛の媚薬の話が伏線として現われる。

登場人物

あらすじ

第一幕
 スペインのバスク地方。村の人々が農作業をしている中、地主の娘で村一番の美人、アディーナは本を読んでいる。内容は「トリスタンとイゾルデ」(恋う者同士が愛を忘れようと飲んだ薬が実は愛の妙薬で、余計に愛に燃えてしまったというお話)。こんな薬があるものかしら、とみんなは歌う。純朴な若者ネモリーノはアディーナに夢中。しかし、そこへ女好きのベルコーレ軍曹がやって来て、めざとくアディーナを口説くが、さらりとかわされる。ネモリーノは勇気を出して告白するが、「そよ風に聞いてごらんなさい」とつれなくされるだけ。でも実は彼女、内気で野暮なネモリーノのことが気になっている。そこへインチキ薬売りのドゥルカマーラが登場し、薬の効用をひとくさり(アリア「おお、村の皆様、お聞きくだされ」)。彼は、イゾルデの愛の妙薬はないかと尋ねたネモリーノに安物のワインを売りつける。それを飲んですっかりいい気分、強気に振舞うネモリーノ。怒ったアディーナは軍曹のプロポーズを受けてしまう。

第二幕
 アディーナと軍曹の婚礼の準備が進んでいる。アディーナとドゥルカマーラは愉快な二重唱:私は金持ち、あんたは美人:を歌う。ネモリーノは妙薬をもう一本買いたいが、お金がない。恋敵ベルコーレは、入隊をすれば20スクードもらえるぞ、と入隊契約書を書かせる。裏では、村の娘たちがネモリーノの叔父が亡くなって莫大な遺産がネモリーノに入ったと噂している。おかげでネモリーノはモテモテ。それを見たアディーナは心に動揺を覚える。自分が本当に惹かれているのはネモリーノではないのかと。彼女はドゥルカマーラから、ネモリーノが入隊してまで妙薬のお金を工面したという話を聞いて、ほろりとする。それをひそかに見ていたネモリーノは、有名なアリア:人知れぬ涙:Una furtiva lagrimaを歌う。アディーナは入隊契約書をベルコーレから買い戻し、ようやく愛を告白。ベルコーレも、世間に女はたくさんいるとアディーナの結婚撤回を許す。ドゥルカマーラもいかさま薬を売り切り、次の村へ。