フォヴォリータ(寵姫) / La Favorita

この作品について

原作:B・ダルノーの戯曲より
台本:A・ロワイエ、G・ヴァエズ(最終稿にはE・スクリーブが参加)(仏語)
※今日の上演では伊語訳版が普通。
初演:1840年12月2日 パリ・オペラ座

 珍しくドラマティックメゾソプラノが主役のオペラ。タイトルは英語の「favorite」=「お気に入り」「寵姫」の意味で、側室を指す。



登場人物

あらすじ

第一幕…1場:聖ジャコモ修道院回廊/2場:レオーネ島の岸辺
 舞台は14世紀半ば、スペイン北部の聖地。聖ジャコモ修道院長バルダッサーレは、娘がカスティリヤ国王アルフォンソ11世の妃。息子フェルナンドは父同様、修道士。国王の寵愛は専ら貴族出身の美女レオノーラに注がれている。フェルナンドは、彼女が王の妾であるとも知らず、思いを寄せている。息子からその思いを打ち明けられた父は、激しいやり取りの末、彼の修道院離脱を認める。
 憧れの女性からの招きで、彼女の館のある島へ船で渡るフェルナンド。だが妾という身分を恥じるレオノーラは、新しい恋人に自分の名前すら明かさない。それどころか、フェルナンドが結婚を願うと、「愛しているからこそ、別れてほしい」と言う。

第二幕…セヴィリヤのアルカサール宮殿
 レオノーラの願いに応えて軍隊に身を投じたフェルナンドは、イスラム教徒討伐の勲功を立てた。一方国王は、宮廷の反対を押し切ってでもレオノーラを王妃に迎えようとするが、彼女は憂かぬ気。華やかな戦勝の祝宴。そこへレオノーラ宛の恋文を侍女から盗んだ廷臣が登場、国王に愛妾の不貞を注進する。不明の差出人はもちろんフェルナンド。他方、王妃である娘をないがしろにする王に怒りを燃やす修道院長も、教皇の権威を振りかざして王の不品行を激しく糾弾する。

第三幕…宮殿内の広間
 武勲の褒美を王から問われたフェルナンドは、居合わせたレオノーラを所望する。耳を疑うレオノーラ。衝撃を押し隠して、王は2人の結婚を許可するが、それは王なりの復讐でもあった。レオノーラの胸には、愛の成就の喜びと、素性判明への不安とが激しく交錯する(アリア「ああ、私のフェルナンド:O mio Fernando」。)せめて式の前にすべてを打ち明けようと彼女は侍女を差し向けるが、手違いで相手には通じない。結局、挙式後、廷臣たちの嘲笑の中でフェルナンドは真実を知るという最悪の状況に。屈辱に震える彼は王から授かった勲章を床に叩きつけ、出て行く。

第四幕…聖ジャコモ修道院
 絶望して修道院に戻ったフェルナンド。そこへ謝罪のため、地位も財産も捨てて後を追って来たレオノーラが半死半生でたどりつく。切々とした訴えについにフェルナンドは改めて愛の暮らしを志すが、望みも空しく彼女は息絶える。