トリスタンとイゾルデ / Tristan und Isolde

この作品について

原作:ゴットフリート・フォン・シュトラースブルクの叙事詩『トリスタンとイゾルデ』(1210頃)
台本:作曲家自身
初演:1865年6月10日 バイエルン宮廷歌劇場

 「叔父の花嫁と道ならぬ恋に落ち、行き着く果ては死」という辛く切ない恋物語。このオペラのテーマは最初から最後まで「愛と死」のみである。作品の中で、トリスタンとイゾルデが死ぬつもりで毒薬を飲んだところ、実は媚薬だった、というくだりがあるが、もし飲んだのがただの水であったとしても、彼らは毒薬と思って飲んだ時点で、死を覚悟=究極の愛に到達していた、という解釈もある。
 なお、原作には「白い手のイゾルデ」と「金髪のイゾルデ」という2人のイゾルデがおり、共にトリスタンを愛しているが、トリスタンが愛しているのは1人だけ。(どっちのイゾルデかは忘れました。現在調査中。)片方のイゾルデの嫉妬により、トリスタンは嘘を教えられて絶望して死ぬ、というエンディング。どのみち、トリスタンに救いは来ない。

登場人物

あらすじ

第一幕
 アイルランドの王女イゾルデは、イングランドのマルケ王に嫁ぐため、王の甥である騎士トリスタンと従者クルヴェナルの護衛に迎えられて船出した。船中でイゾルデは侍女ブランゲーネに、トリスタンへの憎しみの理由を語る。昔トリスタンはイゾルデの婚約者を殺し、自分も深手を負ったが、イゾルデは彼を、仇と知りつつも看護した。そのとき確かにひかれ合ったと思っていたトリスタンが、自分のではなく叔父の妻として求めてきたのだから、いっそう恨みは募る。コーンウォール到着を目前に、イゾルデはトリスタンに罪の償いを求め、毒入りの杯を勧める。そして半分を自分で飲み干してしまう。でもそれは愛の媚薬だった。薬の力で恋に落ちた2人は、陸地の人々の歓迎の声にも気づかず、抱擁していた。

第二幕
 夜、マルケ王の城内。王妃となったイゾルデは、トリスタンと密会しようと、王が狩りに出かける(※北欧の夜は薄暗いため、夜でも狩りができる)時を待っている。ブランゲーネは密告者がいるとイゾルデを止めるが、彼女は耳を貸さない。ようやく会えた2人は激しく抱擁し、恍惚となって愛の喜びを歌う(と、書いてるこっちが恥ずかしい)。ブランゲーネが夜明けを告げても気づかない2人。そこへ、突如マルケ王と従臣たちが帰って来る。甥トリスタンと王妃の裏切りを知って嘆く王。密告者メロートが剣を抜いてトリスタンに迫ると、トリスタンは自ら剣を落とし、深手を負う。

第三幕
 自分の領地カレオールの城の外で、瀕死の状態で目覚めたトリスタンは、イゾルデとの再会を渇望している。クルヴェナルは主人トリスタンを船でここまで運び、イゾルデを呼びに使いをやったのだが、彼女はなかなか来ない。トリスタンは虫の息の中、自分の運命を嘆き、愛の薬を呪い、イゾルデの到着を待ち焦がれる。やがて船が来た合図。ついにイゾルデが駆けつけてくるが、再会も束の間、トリスタンは力尽きる。嘆き悲しむイゾルデ。そこへマルケ王一行の船がやって来る。ブランゲーネから愛の秘薬のことを聞かされた王は2人を許し、結ばせようと思って来たのだ。しかしそれも遅すぎた。イゾルデは「愛の死(Liebestod)」を歌って恋人の亡骸の上で息絶える。