この作品について
台本:作曲家自身
初演:1869年9月22日 バイエルン宮廷歌劇場
祝祭劇全体の前口上にあたるこの作品では、ドラマの前提となる舞台設定が紹介されていく。登場人物は、人間が1人も登場しないのに、妙に人間臭く、欲望、嫉妬、策略などが渦巻く。これらの登場人物の名前などは、北欧神話に由来しており、調べてみるとなかなか面白い。
舞台は川底や地底、大蛇や蛙に変身する場面など、演出家の腕の見せ所が満載。SFファンタジーに近いとも言えるかもしれない。
登場人物
- ヴォータン/バリトン
神々の長。契約の象徴である槍を常に持っている。契約の神のくせに、平気で契約を破りまくるつわもの。 - アルベリヒ/バリトン
ニーベルング族の小人で、ラインの乙女によって守られているラインの黄金を強奪し、それで指輪を作る。この作品の最後まで「悪」の部分を受け持つ役柄でもある。 - ローゲ/テノール
火の神だが、半神(阪神ではない)。奸智(悪知恵)に長けている。 - ファーゾルト/バス
巨人族。お人好し。実はフライアの事が好き。 - ファーフナー/バス
巨人族でファーゾルトの弟。強欲で、後に兄と財宝をめぐって争い、大蛇になる。 - ミーメ/テノール
ニーベルング族の小人。アルベリヒの弟だが、いまいち貧乏くじばかり引く役柄。かと言っていい人でもない。 - フリッカ/メゾ・ソプラノ
ヴォータンの正妻。結婚の女神。嫉妬深い。 - エールダ/アルト
智の女神。常に正しい助言をする。 - フライア/ソプラノ
フリッカの妹。不老不死のリンゴを育てている美の女神。神々は彼女のリンゴによって不老不死の身体を維持している。 - フロー/テノール
幸福の神。ドイツ語で「陽気」を意味するその名の通り、楽天家。 - ドンナー/バリトン
雷神。血の気が多い。ちなみに、ドイツ語で木曜日を意味する「Donnerstag(ドンナースターク:ドンナーの日)」はこの名前から来ている。ドンナーとは「雷」の意味。 - ヴォークリンデ・ヴェルグンデ・フロースヒルデ/ソプラノ・メゾソプラノ・アルト
ラインの乙女たち。個人の名前が出てくることはほとんどない。もちろん、覚えてもあまり意味がなかったりする。
あらすじ
地底に住むニーベルング族のアルベリヒは、3人のラインの乙女に言い寄ろうとして、乙女たちが守っている黄金を発見する。彼女たちは不用意にも、その黄金で造った指輪の持ち主には無限の権力が与えられること、指輪を造れるのは愛を断念した者だけであることを教えてしまう。アルベリヒは自分を拒絶し、馬鹿にしたラインの乙女たちに愛を呪い、黄金を奪って去って行く。
一方、神々の長ヴォータンは、巨人族の兄弟、ファーゾルトとファーフナーに命じて、ライン河畔の山上にヴァルハラ(又はヴァルハル)城を建設させている。兄弟への報酬は、美の女神フライアというのが当初の約束だったが、ヴォータンの妻であり、フライアの姉でもあるフリッカはそれが面白くない。実はヴォータンもフライアを与える気などなく、狡猾な火の神ローゲに解決策を聞こうと思っている。巨人族兄弟は、そこに現れたローゲから、ラインの黄金の話を聞き、報酬はそれがよいと言い出す。自分も黄金が欲しくなったヴォータンがそれを拒むと、巨人族兄弟はフライアを人質として連れ去ってしまった。徐々に老いていく神々。フライアがいなくなったことで、若さを保てなくなってしまっているためである。フリッカの嘆願とローゲの忠告に動かされ、ヴォータンはニーベルング族の住む地下へ降りて行く。
地底の国ニーベルハイムに、ヴォータンとローゲがたどり着く。2人はまずミーメから近況を聞きだす。そこへ配下の小人たちをこき使うアルベリヒが現れるが、やがてローゲの罠にはまってまんまと捕らえられてしまう。
アルベリヒを引きずるようにしてローゲと共に戻ってきたヴォータンは、アルベリヒにラインから奪った財宝を要求。さらに彼は、抵抗するアルベリヒの指から力ずくで指輪を奪い取ってしまう。怒ったアルベリヒは、指輪の所有者には不幸が訪れるよう呪いをかけて去る。巨人族兄弟が人質フライアを連れて現れ、財宝と指輪をも要求する。指輪だけは固守しようとしたヴォータンだが、智の女神エールダの警告で考えを変え、巨人に指輪を与える。すると、指輪を取り合った弟が兄を撲殺してしまう。早くも指輪の呪いが現れたのだ。
やがてヴォータンは神々と共にヴァルハラへ入城。ローゲだけが、近づく神々の終焉を端で見通している。