パルジファル / Parsifal

この作品について

原作:ヴォルフラム・フォン・エッシェンバッハ『パルツィヴァール』(13世紀初頭)
初演:1882年7月26日 バイロイト祝祭劇場

 ドイツ各地の歌劇場は、復活祭の時節になると「パルジファル」一色になる。日本では未だに「舞台神聖祝祭劇」という物々しい呼び名とキリスト教的な「共苦」や儀式というテーマのせいもあってか、難解で近寄りがたい雰囲気があるようである。ワーグナーはこの作品を、バイロイト以外の劇場でやらないようにと指示を出した。

登場人物

あらすじ

第一幕
 老騎士グルネマンツと小姓たちがアンフォルタス王を待っているところへクンドリが現れ、アンフォルタス王への薬を託して倒れる。彼女はかつて魔法使いに操られて王を誘惑し、奪った聖槍(ロンギヌスの槍か?)で王を傷つけた。やがて王が登場、薬を受け取り、傷の治療のために湖へ。グルネマンツは小姓たちに、魔法使いの邪悪な策略を語り、「共に悩んで智を得る、無垢な愚か者を待て」と、王を救う神託が下されたことを教える。そこへ湖の白鳥を傷つけた少年が引っ立てられて来た。素直に罪を認めるが、自分の名前も言えない。老騎士は先刻の神託を思い出し、少年を城へ連れて行く。
礼拝堂では父ティトゥレルの勧めで王が聖杯の儀式に臨むが、罪の傷を負う王にとってこの儀式は苦悩を増すばかり。少年は何も解せず、結局追い出されてしまう。

第二幕
 クリングゾールはクンドリに愚か者の誘惑を命じる。やがて魔法使いの城に入って来た少年は、美しい花園や女たちに無邪気に驚く。その時「パルジファル」と呼ぶ声がして着飾ったクンドリが現れる。少年はハッとして、母が自分につけた名前を思い出す。クンドリは優しく母の愛を語り、接吻をする。
 しかしこの接吻によりパルジファルは智を得、王の苦悩の意味を悟る。誘惑に失敗したことを知った魔法使いが、パルジファルに聖槍を投げつけるが、槍は彼の頭上で止まり、彼がそれをつかんで十字を切ると、城は崩れ、花園は荒野に戻る。

第三幕
 グルネマンツが倒れているクンドリを起こす。そこへ槍を手にしたパルジファルが登場。これまでの経緯を知ると老騎士は感動して、苦悩を続ける王の様子を語る。泉の水による洗礼の後、3人は城に向かう。
 城内では再び聖杯の儀式が始まろうとしていた。亡き父の棺が開かれると、王は悲痛な表情で「我にも死を与えよ」と叫ぶ。この時パルジファルが進み出て聖槍の先で王の傷口に触れると、たちまち傷は癒えた。新王となったパルジファルの掲げる聖杯は輝き、人々は頭を垂れる。クンドリはその場に倒れて息絶え、苦悩からの解放を得る。