この作品について
原作:グリム兄弟「童話全集」より
台本:作曲家自身
初演:1939年 バイエルン国立歌劇場(ミュンヘン)
1937年作曲の世俗カンタータ「カルミナ・ブラーナ」の手法を使い、ドイツメルヘンの世界を描いたオペラ。パートは全て男声。
登場人物
- 語り手/ハイテノール
特に高音域のテノール。決して、ハイテンションなテノールではない。 - 月を盗む若者たち/バリトン2人、テノール、バス各1人
- 農夫/バリトン
- ペトルス/バス
古代の北欧の神。 - 子供、居酒屋の亭主、農夫/台詞のみ
あらすじ
第1幕……天、地上、地下に分かれた空想の世界
語り手が現われ、月のない国の4人の若者が旅先でオークの木に吊るされた輝く球を見つけた、と物語る。
4人の若者はその球を指して、それが何なのかと訊ねる。農夫は、村長が買ってきた月だと答え、毎日油を足して磨いていると答える。若者たちは、それを盗むことに決め、木に登って月に穴を開けると、紐を通して下ろし、手押し車に載せて逃げる。
村長と農夫たちが酔って現われ、辺りが暗いことに気づく。村長が木に登って、月が盗まれていることに驚き、騒ぐ。
一方4人の若者は、自分たちの国のオークの高い木に月を吊るし、村の夜を明るくする。
舞台が暗転すると、背景の星座が動き、長い時間が過ぎて行く。
年老いた4人の若者は、それぞれ月の4分の1を自分の墓に入れるようにと遺言して死んでいく。(盗んだものを自分の墓に入れるな!)最後の男が死ぬと、ついに村から月がなくなってしまった。
墓場の地下で、第1の男が棺を開くと、月の光が洩れ出す。彼は残りの3人の仲間を起こし、月をつなぎ合わせて穴蔵の天井に吊るす。するとあまりの明るさに死者たちが目を覚まし、飲めや歌えやの大騒ぎが始まり、ついには大喧嘩まで勃発。驚いた4人は月を消してしまうが、死者たちは月の光を点けろと騒ぎ出す。
天からこの様子を見ていたペトルスは、星を投げつけて稲妻を起こす。4人は暗やみに再び月を灯すが、降りてきたペトルスは、死者の世界に光は要らぬと言いながら、皆に酒を勧める(ただの酒好き?!)。ペトルスは落ち着いた死者たちに、宇宙の摂理を説き、死者たちを諭して、また静かに眠るよう、優しく告げる。死者たちは眠りにつき、ペトルスは月を天に持ち帰る。地上の子供たちは月を見て喜び、地下からは死者たちのいびきが聞こえてくる。