この作品について
台本:J.アペルとF.ラウンの『妖怪物語』よりF.キント
初演:1821年6月18日 王立劇場(ベルリン)
正統派ドイツ・ロマン派オペラの発端となった記念碑的作品で、ワーグナーに至るドイツ国民歌劇の道を開いた功績は大きい。合唱の役割が大きい作品でもあり、特に序曲は、現在の日本の讃美歌にもなっているほど美しく、有名。
悪魔の谷の場面などは、ストロボや煙などの特殊効果をふんだんに使用できる見せ場。音楽も、効果音のように作られている。
登場人物
- マックス/テノール
射撃の名手。アガーテに思いを寄せている。 - アガーテ/ソプラノ
護林官クーノーの娘。マックスとは相思相愛。 - カスパール/バス
マックスと同じく射手だが、良い結果を出すために、悪魔ザミエルに魂を売ってしまっている。 - エンヒェン/ソプラノ
アガーテの従妹。 - クーノー/バス
オットカール公爵の護林官。アガーテの父親。 - オットカール公爵/バリトン
ボヘミアの森を領地内に持つ領主。 - 隠者/バス
アガーテに白薔薇のお守りを渡したり、マックスを追放から救ったりと、何かといい人。なぜか、こういう「徳の高い人」って、バリトンよりも低いバスの役がほとんどな気がする。
あらすじ
第一幕……第1〜6場:30年戦争が終わった頃。ボヘミアの領主領の森の中
射撃大会の前日、射撃の予備競技で、名手マックスは不覚にも農夫に敗れてしまう。オットカール公爵の護林官クーノーの娘アガーテと結婚し、護林官の職を継ぐためには、明日の御前試合で優勝しなければならない。クーノーに念を押され、1人残ったマックスは、アガーテへの愛と不安な気持ちを歌う(「森を過ぎて野を越えて」)。絶望に沈むマックスを、悪魔ザミエルに魂を売ったカスパールが「夜中の12時に一緒に狼谷へ行って、伝説の魔弾を手に入れれば、明日の競技に絶対勝てる」と誘惑する。マックスはアガーテを思う余り承諾してしまう。1人ほくそえむカスパール。
第二幕……第1〜3場:クーノーの館/第4〜6場:狼谷
アガーテは、従妹のエンヒェンと一緒にマックスの帰りを待っている。すると突然、壁の肖像画が落ち、不吉な予感を抱くアガーテを、エンヒェンは「りりしい若者が来るときは」と軽やかに歌って場をなごませる。ひとり、「まどろみが近寄るように」とマックスへの愛を歌うアガーテは、朝方、森の隠者から白い薔薇のお守りをもらったことを思い出す。
マックスは深夜、ついにカスパールと共に狼谷へ行ってしまう。先に狼谷にたどり着いたカスパールは、悪魔ザミエルとの契約で差し出した自らの命の代わりに、マックスを差し出すと悪魔ザミエルに提案。ザミエルは、最後の7発目の魔弾は「私が思ったところに当たる」といい、その犠牲者はマックスかカスパールだ、と言い残して去る。そこへ遅れてマックスが現れる。7発の魔弾を鋳造し終えたところで、2人は気を失って倒れてしまう。
第三幕……第1場:森の中/第2〜5場:アガーテの部屋/第6場:射撃大会会場
御前試合の当日。カスパールは、マックスの魔弾が最後の1発になるよう、自分の分を撃ち尽くしてしまう。不吉な夢を見たアガーテをエンヒェンが慰めるが、そこへ届けられるはずの婚礼用の花冠は、葬儀用のものだった。そこでアガーテは、隠者にもらった白い薔薇で自分の髪を飾ることにする。領主オットカールの命で、マックスが最後の魔弾で白い鳩を撃とうとしたとき、「撃たないで」とアガーテが叫ぶ。しかし弾は放たれ、アガーテが倒れる。しかし白薔薇に守られたアガーテは助かり、魔弾は木陰に潜んでいたカスパールに当たった。すべての事情を知った領主は、マックスの追放を命じる。そのとき隠者が現われ、マックスに1年間の猶予を与えることを提案。領主もこれを快諾した。しかもその間、正義に背かなければ、アガーテとの結婚も許す、とした。人々は喜び、天の神に感謝して幕。