アラベラ


Arabella

台本:フーゴー・フォン・ホフマンスタール
初演:1933年7月1日 ドレスデン・ザクセン国立歌劇場
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 R・シュトラウスとホフマンスタールの名コンビによる最後の作品。19世紀中葉、古き良き時代のウィーンを舞台とした艶やかな恋物語で、叙情的喜劇と銘打たれている。
 キーワードは没落貴族の人間模様、性格の全く異なる姉妹(妹は男の子として育つ)の男性観、退廃の香り漂う舞踏会。
 ホフマンスタールは台本完成直後の1929年7月に急逝、初演を見ることは出来なかった。


登 場 人 物

アラベラ  ソプラノ
 没落貴族の令嬢。その美しい容姿で人気がある。

ズデンカ  ソプラノ
 アラベラの妹。娘を2人も嫁がせる金もなく、妹はやんちゃだった、ということで男の子「ズデンコ」として育てられている。姉のアラベラを慕うマッテオに思いを寄せている。

マンドリカ  バリトン
 資産家の甥。

マッテオ  テノール
 若い士官。アラベラへの恋心をズデンコによく相談している。


あ ら す じ

第1幕
 破産寸前の没落貴族、ヴァルトナー伯爵だが、見栄を張ってウィーンでホテル暮らしをしている。請求書が届いても払うお金も無く、使いを頼んだ給仕にまで「給料を払って頂ければお仕事致しますが」と言われてしまう始末。2人いる令嬢のうち、妹は「嫁がせる金が無い」とのことで、男の子として育てられている。両親の願いは、姉のアラベラが資産家と結婚し、裕福になること。
 そこへアラベラに思いを寄せている士官のマッテオが現れるが、アラベラにはまるでその気がない。彼の友人として、彼を慰めるズデンカ(劇中では男性名「ズデンコ」と呼ばれている)の方が、実はマッテオのことを愛してしまっている。だが、ズデンカは妹として、姉アラベラとマッテオが幸せになってくれるように、とマッテオを励ます。今夜の舞踏会でアラベラの結婚相手が決まるため、それに期待をかけて帰るマッテオ。
 そこへ、父がアラベラを嫁がせようと手紙を出した資産家の甥・マンドリカが、手紙を持ってやって来る。なんでも、彼の叔父は手紙を受け取る前に亡くなったとのこと。残された唯一の遺族としてその手紙を読んだ彼は、同封されていたアラベラの写真に心を奪われ、彼女と結婚させて下さいと、持っている土地や森を売り払い、大金を持って来たのだ。大金に気を良くした父は、きっとアラベラはあなたを気に入るでしょう、と舞踏会に彼を招待する。

第2幕
 舞踏会で初めて顔を合わせたアラベラとマンドリカの2人は、お互いを生涯の伴侶と認め合う。マンドリカの故郷では、泉の水を婚約者に捧げるという風習があることを聞き、アラベラは「私こそがあなたに水を飲ませるでしょう」と、マンドリカとの結婚を承諾する。
 娘時代の最後にと、皆とワルツを踊る。自分が選ばれなかった、とマッテオは絶望する。それを見た妹ズデンカは、「姉の部屋の鍵だ」と言って、自分の部屋の鍵をマッテオに渡す。それを立ち聞きしたマンドリカは、アラベラの不貞だと勘違いしてしまう。

第3幕
 マッテオが部屋から出てくると、さっきまで一緒にいたはずのアラベラは彼を冷たくあしらう。状況が理解できないうちに、マンドリカがアラベラを激しくなじる。そこへ、寝巻き姿のズデンカが部屋から飛び出してくる。全ての状況が明らかになり、マンドリカは自分の心の狭さを恥じ、マッテオはズデンカの一途な愛に感動し、彼女を抱きしめる。
 召使に「水を1杯ちょうだい」と言って自分の部屋へ戻って行くアラベラ。マンドリカはもう自分は許してもらえない、と落胆するが、しばらくして周りのみんながいなくなると、アラベラが部屋から出てくる。「あなたのことを思ったら、幸せが喉の渇きを取り去ってくれたの」と言ってコップに入った水をマンドリカに差し出す。彼は「このコップから水を飲むのは、私が最後だ」と言って水を飲み干し、グラスを床に叩きつける。2人は永遠の愛を誓い、幕。

† END †