カルメン / Carmen

この作品について

原作:プロスペル・メリメの小説『カルメン』
台本:リュドヴィック・アレヴィ、アンリ・メイヤック(仏語)
初演:1875年3月3日 オペラ・コミーク座(パリ)
(台詞部分を叙唱に直した正歌劇としては1875年7月23日:ウィーン・宮廷歌劇場)

 「魔性の女」の代名詞とも言えるカルメン。序曲やハバネラ(最近CMでよく歌われていますね)、闘牛士の歌など、誰でも一度は聞いたことがある曲がめじろ押し!しかし初演当時は、過激な内容と、ジプシーが主人公という題材から、ほとんど上演されず、しかも失敗作の烙印を押されていた(作曲者はそのショックからか、初演の3ヶ月後に亡くなっている)。この作品が認められ、有名になったのは作曲者の死後。ビゼーが現代に生きていたら、泣いて喜んだに違いない。
 作曲者はフランス人で、歌詞もフランス語だが、今ではスペインの代名詞として世界に広く知られている。



登場人物

あらすじ

第一幕
 セビリヤのたばこ工場前の広場。衛兵詰め所に婚約者である伍長ドン・ホセを訪ねて来た村娘ミカエラは、まもなく彼が着任すると知らされ、また来ると告げて去る。兵隊の真似をする子どもたちを後に引き連れ、行進曲にのって衛兵たちの交代が行われ、ホセが警備につく。工場が昼休みになり、若者たちが待つ広場に女工たちが現われ、やがて人気者カルメンが登場する。彼女は言い寄る男たちには目もくれず、無関心そうなホセにL'amour est un oiseau rebelle:恋は野の鳥(「ハバネラ」という名で有名!)を歌い、赤い花を投げ付けて去る。ホセは花を懐に忍ばせる。するとミカエラが戻って来て、ホセに母からの手紙と接吻を伝え、2人の故郷を想う二重唱となる。ミカエラが去ると、工場内で喧嘩が起き、傷害罪でカルメンが引き立てられて出て来る。彼女の連行を命じられたホセを、人気のない時にカルメンは「Seguedille:セギディリャ」で誘惑する。負けたホセは縄をほどき、カルメンを逃がすが、彼は捕らえられる。

第二幕
 密輸入者が経営する場末の居酒屋、リリャス・パスティア。カルメンが仲間と奔放に歌う「ジプシーの歌」。取り巻きたちとともに現われた人気闘牛士エスカミーリョは「闘牛士の歌」を歌い、引き上げて行く。閉店すると、密輸入仲間の相談が始まり、カルメンは仕事に誘われるが、断る。そこに歌声が聞こえ、釈放されたホセがやって来る。喜んだカルメンは「アルト・ラ」を歌い踊って歓迎するが、ホセが帰営ラッパに早々と帰り支度をしたことに怒る。困惑したホセは懐から枯れた赤い花を取り出し、恋情を「花の歌」で告白する。カルメンに気のある隊長スニガが店に戻り、ホセを見て決闘となるが、密輸入仲間が現われて止め、スニガを追い出すので、ホセは仕方なく密輸入仲間に入る。

第三幕
 寂しい山中の密輸入者の根城。ジプシーたちが荷を担いで戻って来る。仲を取り戻そうと懸命なホセを冷たくあしらい、フラスキータとメルセデスのカルタ占いに加わったカルメンが、何度やっても『死』と出るので、運命を悟る「カルタの三重唱」が歌われる。そこへエスカミーリョが現われ、ホセの質問に、愛するカルメンに会いに来た、と答えるので、2人は決闘になる。ジプシーが止めに入り、エスカミーリョが去るとミカエラが連れて来られ、彼の母親が危篤だと伝える。ホセとミカエラは山を降りる。

第四幕
 大歓声の中、エスカミーリョがカルメンを伴って闘牛場に姿を見せる。フラスキータとメルセデスはカルメンに、ホセが来ている、と注意するがカルメンは意に介さない。カルメンがひとりになると、物陰からホセが現われる。もう一度やり直そう、というホセの嘆願を退けるカルメン。その上、今はエスカミーリョを愛しているとさえ言ってのけ、ホセにもらった指輪を投げつける。激情したホセは、短刀でカルメンを刺し殺してしまう。崩れ落ちていく彼女に身をあずけるようして号泣するホセ。