この作品について
原作:A.スーメの劇『ノルマ』
台本:フェリーチェ・ロマーニ(伊語)
初演:1831年2月26日 スカラ座(ミラノ)
清さの象徴である巫女ノルマだが、実は2人の子持ち。しかもその相手は敵方ローマ軍の武将。巫女にはあるまじきスキャンダルの宝庫だが、最後には自らを犠牲に多くの人を救う。
登場人物
- ノルマ/ソプラノ
ガリアのケルト人たちを導く巫女長。ソプラノ屈指の難役と言われる役。劇的な表現に富み、かつ軽快な動きの出来る声とテクニックが要求される。アリア「清い女神よ」は、ソプラノなら誰でも一度は歌ってみたいと思わせるほど、ベッリーニのアリアの中でも美しく流麗なアリアである。モンセラート・カバリエのアリアは絶品。 - ポリオーネ/テノール
ローマ総督。ノルマの2人の子供の父親。だが今は若い巫女に心移りしている。最後はノルマの崇高な愛と犠牲に打たれ、自ら犠牲になる。 - アダルジーザ/ソプラノまたはメゾソプラノ
若い巫女。ノルマのかつての恋人と恋仲になってしまう。しかし冷静に考えれば、禁断の恋に悩み苦しみ(しかもその相手はかつては巫女長ノルマの恋人だった!)、最後には恋人の愛まで失ってしまう、ちょっぴり悲しい人。しかもノルマ級の歌唱力が要求される。意外と難役(意外と、は余計か)。
あらすじ
第一幕
ローマ圧政に苦しむガリアのケルト人たちは、反政の時期をうかがっている。だがドルイド教の巫女長ノルマは密かにポリオーネとの間に2人の子供をもうける仲になっていた。だが、ポリオーネが友人と現われて、もはやノルマへの愛は冷め、若い巫女アダルジーザに心移りしたことを語り合って去る。人々が集まる中、ノルマが登場。血気にはやる皆を鎮め、「清い女神よ:Casta Diva」で祈りを捧げながら、恋人への愛と神や同胞への忠誠とのジレンマに悩む胸の内を吐露する。
ノルマの家にアダルジーザが現われ、禁断の恋の悩みを打ち明ける。自分の体験を重ね合わせて同情するノルマだったが、ポリオーネの登場で事実を知って激怒。復讐を誓うノルマ、開き直るポリオーネ、呆然とするアダルジーザの劇的な3重唱が展開される。
第二幕
ノルマは眠るわが子を殺そうとするが、どうしても出来ない。アダルジーザに、子供をローマのキャンプへ連れて行き、ポリオーネと添い遂げて子供を守るよう頼み、自分は命を断つつもりだ、と告げる。それに感動したアダルジーザはノルマに翻意を促し、ポリオーネにノルマのもとに戻るよう説得すると誓う。友情と再起への思いを歌い上げる2重唱。
森の近くではドルイド教の首長でノルマの父オロヴェーゾがはやる兵士たちをなだめ、時期到来を待つよう諭す。
寺院でノルマが恋人の心を取り戻せる喜びに浸っていると、乳母がアダルジーザの説得が失敗に終わったことを告げる。怒り狂ったノルマは人々を集め「神のお告げが下った」とローマ軍殲滅を命じる。兵士たちが雄叫びを上げる中、アダルジーザを誘いに来て捕まったポリオーネが引き立てられて来る。復讐を叫ぶ兵士たちに代わってノルマが剣を取り彼を刺そうとするが躊躇し、「2人だけで話したいことがある」と人払いをする。「アダルジーザを諦めればポリオーネの命は助ける」というノルマの申し出を、ポリオーネは冷たく拒否。激昂したノルマは皆を集めて「巫女の中に裏切り者がいる。その者を生け贄に」と告げる。皆が固唾を飲んで見守る中、ノルマの口から出たのは「私こそ、その裏切り者だ」と告げる。一同の驚愕がやがて深い感動に変わり、父親に子供を託したノルマと彼女の崇高な愛に目覚めたポリオーネの2人が火刑台に進む。