この作品について
原作:ホメロスの叙事詩「オデュッセイア」
台本:ジャコモ・バドアロ
初演:1642年の謝肉祭 ヴェネツィア・サン・カッシーノ劇場
世界で初めて、一般市民が入場料を払って楽しむオペラハウスが誕生したヴェネツィアでの上演のために、世界最初のオペラの巨匠・モンテヴェルディが遺した神話物語。
オデュッセイアの帰郷をモチーフに、神々と人間が入り乱れるばかりか、ルネサンス演劇らしく、本筋とは無縁な道化やコミックな登場人物も生き生きと描かれる。神の登場や空中騎行など、観客を楽しませる大掛かりなスペクタクルもある。
登場人物
- ウリッセ(ユリシーズ)/テノール
トロイ戦争の英雄。 - ペネロペ/ソプラノ(又はメゾソプラノ)
ウリッセの妻。 - テレマコ/テノール
ウリッセとペネロペの息子。
あらすじ
天上で「人間のはなかさ」「時」「運命」「愛」が議論するプロローグに続き、イタケ島の宮殿では、王妃ペネロペが、トロイ攻略から20年も戻らないウリッセ王を嘆く。
ウリッセを乗せた船が到着。トロイ陥落を恨む海神ネットゥーノは、船員を石にしてしまう。女神ミネルヴァによって老人姿とされたウリッセは、忠実な豚飼いエウメテを訪ねる。ミネルヴァが天駆ける馬車で王子テレマコをイタケ島に運ぶ。父との再会を喜ぶ王子。
王宮の客として滞在し、国庫を食い潰す求婚者たちは、王妃に迫り毎度ながら退けられる。豚飼いが王子の帰国と国王の無事を伝えても、王妃は信じない。求婚者らは、王子謀殺を企む。王妃はウリッセの弓を引けた者と結婚すると宣言。誰もが成功しないが、老人が弓を引き、求婚者を次々と射抜く。
ミネルヴァが、神々にウリッセを赦すよう願い、海神もついに聞き届ける。王の姿でウリッセ登場。まだ王妃には夫と信じられないが、夫婦の秘密の寝室の覆いについて語るのでやっと夫と納得、「憧れの我が太陽」の2重唱で喜びを歌う。