ポッペアの戴冠 / L'Incoronazione di Poppea

この作品について

原作:タキトゥス「ローマ年代記」
台本:ジャン・フランチェスコ・ブゼネッロ
初演:1642年冬 サンティ・ジョヴァンニ・エ・パオロ劇場(ヴェネツィア)

 モンテヴェルディが最後に残した、大作歴史ドラマ。
 古代ローマ皇帝ネロの史実を下敷きに、陰謀渦巻く人間劇が赤裸々に描かれる。勧善懲悪を超え、喜劇と悲劇とが渾然一体となった複雑なストーリーには、シェイクスピアの歴史劇に近い深みもある。音楽は朗誦中心だが、第2幕のセネカ自殺の場面の緊迫感や、終幕のネロとポッペアの2重唱の濃厚な官能性は、現代でも強烈なインパクトを持つ。
 最後にはネロの愛を奪ったポッペアの勝利に見えるが、後に彼女も、オッターヴィアと同じ運命を辿ることになる。
 オリジナル譜ではネローネ役は男性ソプラノ、オットーネ役は男性アルトになっており、さらに楽譜も2種類存在し、上演には難関が多い。

登場人物

あらすじ

 「運」「徳」「愛」の神が、誰が人生に一番大事か論争。「愛」は、我こそ人間を動かす主君と宣言する。
 武将オットーネが家に戻ると、門に皇帝ネロの護衛兵がいることから、妻ポッペアとネロの不貞を悟る。ネロの愛を失った皇后オッターヴィアを慰める哲学者セネカは、皇帝に自重を促す。邪魔なセネカを殺すよう、皇帝に入れ知恵をするポッペアは、亭主の嘆願は無視。オットーネを慕う娘ドルシッラに、オットーネは慰められるが、ポッペアへの恋慕は隠せない。
 ネロに自殺を命じられたセネカは、浴槽に横たわり平静に命を絶つ。その報告にネロは大喜び。一方、皇后はオットーネにポッペア殺害を依頼。オットーネはドルシッラから衣装を借り、女装して妻に接近するが、間一髪で「愛」に阻止される。
 ポッペア暗殺容疑でドルシッラは逮捕される。処刑直前にオットーネが登場、真実を告げる。ネロは暗殺未遂犯を流刑にし、黒幕の皇后オッターヴィアも離縁し、同罪に処す。オッターヴィアは悲痛な心を「さらばローマ」で吐露。ネロはポッペアを皇后として戴冠、悪人の喜びの2重唱で幕となる。