奥様女中 / La serva padrona

この作品について

台本:ジェンナロ・フェデリコ(伊語)
初演:1733年8月28日 サン・バルトロメオ座(ナポリ)

 このオペラは、オペラ・セリア(正歌劇)の幕間に挿入される劇として作曲された。当時は、オペラ・セリアの幕間には、喜劇的な要素をふんだんに盛り込んだ幕間劇(インテルメッツォ)が挿入されるのが習慣となっていた。伝統的なコメディア・デッラルテの様式によるこの喜劇は好評を得、後にオペラ・ブッファとして独立して上演されるようになった。
 ちなみに、この幕間劇が挿入された時のオペラは、不評であったらしい。

登場人物

あらすじ

第一部
 金持ちの老人ウベルトの部屋。下男のヴェスポーネがのろのろと掃除をしている。ウベルトは、毎朝飲むチョコレートを女中のセルピーナに持ってこさせているが、今日に限って3時間半経っても持ってこないため、いらいらし通し。幼いころから育ててやったのに、今ではまるで女主人のように威張っている、と憤慨し、下男に催促に行くよう命ずる。
 やがて現れたセルピーナだが、ウベルトの怒りにも平然と、今日はもうお昼が近いから朝のチョコレートは飲んだことにしましょう、とまるで取り合わない。ますます怒り心頭のウベルトは、今に後悔する時が来る、とどなり散らす(アリア「お前と私はいつも考えが違う」)。
 言うことを聞かないセルピーナを置いて1人外出しようとするが、セルピーナに止められる。仕事に口出しをするな、と彼女を起こるが、出かけてほしくないと言われ、押し問答になる。
 セルピーナはウベルトを手玉にとろうと、静かにしているあなたの方が好きだ(アリア「おこりんぼさん」)、などと言うので、ついにウベルトは、自分は結婚するからお前は出て行けと怒る。するとセルピーナは、結婚するなら私としましょう、私はあなたと結婚することに決めているの、と言い出す。悪魔よりもうわ手な女だと言い返すウベルト。口では嫌と言っても、目が私を好きだと言っているわ、と言うセルピーナと愉快な2重唱になる。

第二部
 同じ部屋の中、その日の午後。金持ちの老人の妻の座(=遺産が手に入る)を狙っているセルピーナは、ヴェスポーネを買収(!)し、彼に大尉の軍服を着せ、大きなひげをつけて婚約者に仕立てる。そこに外出しようと着替えてきたウベルトがやって来る。セルピーナはここぞとばかりに、長い間お世話になりましたが、婚約者の大尉が訪ねてきて急に結婚することになりましたとウベルトに挨拶し、婚約者は雷大尉と呼ばれるほど気性の激しい人だから、彼を怒らせると何をするかわからない、と脅す。そして、いかにも悲しそうに、アリア「セルピーナのことを忘れないで」としおらしく歌うが、このアリアの間に、細工を独白する。
 ウベルトは、彼女を手放すのが惜しくなってくる(アリア「俺の頭はどうかしたのかな」)。そこにセルピーナが、大尉(ヴェスポーネの変装)を連れて来る。セルピーナは、大尉の通訳をするふりをして、ウベルトに後見人として莫大な持参金を要求する。もし持参金を出せないなら、セルピーナを嫁にしろ、と大尉が言っていると脅し、大尉は刀を抜いて暴れる身振りを見せる。それを見て恐ろしくなったウベルトは、セルピーナと結婚すると言ってしまう。そしてセルピーナが用意していた聖書に手を置いて誓いを立てる。その直後、セルピーナは計略が成功したと言って、大尉に扮したヴェスポーネの扮装を取る。
 ウベルトは謀られたと知るが、セルピーナの魅力のとりこになっていたので、結婚に同意し、軽妙な愛の2重唱を歌って幕。