この作品について
原作:オヴィデウス「転身譜」第10・11巻、ヴェルギリウス「農耕歌」第4篇
台本:ラニエロ・デ・カルザビージ
初演:1762年10月5日 ウィーン・ブルク劇場
形式的芸術から、人間的感情表現へとオペラを深化させる革命を行ったグルック最初の改革オペラ。現在、「オペラ」と呼ばれている芸術の最初の形を作ったのが、グルックである。
物語は昔ながらのオルフェウス主題だし、取ってつけたようなハッピーエンド(当時上演された時が、結婚祝いだったからかもしれない)もまだ劇性にはほど遠いが、オペラの演劇性を停滞させる原因だったアリアや重唱に展開を進める役割を持たせたのは、当時としては画期的であった。間奏曲などの管弦楽パートの充実も特徴で、ベルリオーズやワーグナーにも大きな影響を与えた。
これをパロディ化して作られたものが、オッフェンバック作曲の「天国と地獄(地獄のオルフェウス)」である。
ひとつだけ言っておくと、このオペラは長い。本当に長い。オルフェウスが冥界の番人を感動させる所、冥界から戻ってくる所、1つ1つが長い。「早よ進めっ!(# ゚Д゚)ムッキー」と思うのは、私だけではあるまい。
登場人物
- オルフェオ/アルト
歌の名手。 - エウリディーチェ/ソプラノ
オルフェオの妻。結婚式の日に毒蛇に噛まれて死んでしまうという、悲劇の典型というかなんというか。 - アモール/ソプラノ
愛の神。なんてアバウトな設定。
あらすじ
羊飼いやニンフらが取り囲む中、比類なき楽人オルフェオが、妻エウリディーチェの墓前で泣き崩れている。愛妻に逝かれた不幸を嘆いていると、愛の神アモール(エロス)が登場、ゼウス神が憐れみ、特別に霊界ハデス(聖書では「地獄」ですが…。)への旅を許すので、音楽の力で地獄の番人らを魅了すれば、妻を地上に連れ帰ってよろしいとのこと。(そんな無茶な(´Д`;))ただし、何があっても亡妻の姿を振り返ってはならず、事態を説明してもいけない、という条件。オルフェオはハデスへと向かう。…チャレンジャーだな。
嘆きの河の洞窟で、復習復讐の女神や死霊たちが踊っている。苦しみを吐露するオルフェオのアリア「忌まわしい亡霊たちよ」に感動し、亡霊たちは去る。
フルートが独奏する妖精の踊りが、楽園エリシウムへの到着を告げる。妻を発見し、2人は地上へ向かう。道中、自分を見ようとしない夫を訝るエウリディーチェは、次第に不安になり、錯乱してゆく。耐え切れぬオルフェオが妻を抱いた瞬間、妻は死ぬ。(いや、もう死んでたんじゃ…いや、なんでもないです。)名アリア「エウリディーチェを失って:Che farò senza Euridice」で嘆くオルフェオは自殺を決意。その瞬間、愛の神が出現し、愛妻を甦らせる。(最初っからそうすりゃええやん!…いや、なんでもないです。)地上のアモールの神殿で、全員が愛を讃えて歌い踊る。ちょっと怖い光景。…いや、なんでもないです。