この作品について
原作:ヴェルギリウスの『アエーネアス』に拠る
台本:ネーハム・テイト
初演:1689年12月 チェルシーの女学校
英国初の大作曲家パーセルの代表作。古代ローマの大詩人・ヴェルギリウスの建国叙事詩「アエーネアス」(エネアスのこと)により、ギリシャに滅ぼされ新たな故郷を求めさまようトロイアの名将エネアスと、カルタゴの女王ディドの悲恋の逸話を描く。
女学校での上演を目的に書かれ、上演時間1時間弱、オーケストラも最小規模ながら、シェイクスピア時代歌劇の諸要素をすべて網羅し、傑作として繰り返し上演されている。もちろん、言語は英語。読み方によっては「ダイドーとアエーネアス」と発音されることもある。
登場人物
- ディド/ソプラノ
カルタゴの女王。トロイアの王子エネアスと恋に落ちる。 - エネアス/テノール又はバリトン
トロイアの王子。ディドと恋に落ちる。 - ベリンダ/ソプラノ
ディドの侍女。 - 魔術師/メゾソプラノ又はバリトン
ディドに悪意を抱き、陥れようとしている。
あらすじ
第一幕
地中海の国カルタゴの宮廷。女王ディドが身の不幸を嘆いている。客として逗留する英雄エネアスを恋してしまったのだ。従者ベリンダが女王に代わって苦悩する心を明かすと、合唱は両国の合同の可能性を喜び、女王を勇気づける。登場したエネアスも恋心を打ち明ける。
第二幕
場所は変わって、とある洞窟。ディドに悪意を抱く女魔術師が魔女たちを呼び出し、ディドとエネアスに破滅をもたらす策を練る。狩りの最中に墓場で嵐に見舞われたディドとエネアスは、風雨を避ける途中で離れ離れになってしまう。すると、エネアスの前に、マーキュリー神の姿をした女魔術師の霊が出現。今晩ここを去り、約束の地イタリアへ向かうよう、英雄に命令する。恋人との別れに苦悩しつつも、エネアスは神のお告げに従わざるをえない。
第三幕
港では船乗りたちが出航の準備を進めている。魔女たちは策略の成功に喜び、不気味に踊る。愛のために神の命令に背く、と主張する英雄に、女王ディドは気丈にもイタリアに向かうよう説く。エネアスが去るや、ディドは私が地に伏す時:When I am laid in earthを歌い、哀しみのあまり絶命する。するとその死体の上にキューピッドが現れ、愛に死んだ清い魂のため、薔薇の花を撒く。